竹野で生まれ変わった元空き家たち 住まい編④

今回のお宅は…

今回お邪魔したお宅は、2021年3月にご夫婦で東京から移住したばかりの森家。旦那様は演劇やダンスを被写体とする舞台写真家、奥様は但馬漁協の商品開発&販売部門で働いています。

※この記事で使用している写真はすべて旦那様が撮影したものです。

森家のリノベーションの特徴は、なんと言っても「エクセルギーハウス」であるということ。エクセルギーハウスとは、家全体を魔法瓶のように断熱材で囲み、壁温度を保つことで輻射熱による快適空間を創り上げる家のことです。床下には水タンクを設置し、それを夏は冷やし、冬はあたためることで暑さ寒さを和らげる効果があります。購入した古民家にはたまたま井戸が通っていたので、これに関する水道代は0円(ラッキー!)。

購入前の外観(外壁には今後焼板を張る予定)
森家

どんな場所を探していましたか?

庭がある家や海に近い家が理想的だとは思っていましたが、初めから古民家を探していた訳でも、家を買おうと思っていた訳でもありませんでした。2020年7月に初めて竹野を訪れた際、まずは賃貸物件を見た後、たけのかぞくから、「ちょうど家主さんが手放したいと言っている家があるよ」と言われ、この家を見ました。記録が残っているだけでも築80年は経っている建物で、梁や柱も太く、古い家ならではの趣きを感じました。竹野の海の美しさも、周辺の焼板の町並みも、こんなに素敵だとは知らずに訪れたので、一瞬で好きになりました。

修繕内容は?

まず、間取りをシンプルな状態に戻しました。80年の歳月の中で、昔の土間の上に被せるように廊下が作られていたり、土間にはみ出す形で押し入れとクローゼットが増設されていたので、これらを取っ払いました。今後、外壁には竹野の焼板を張り、内壁には珪藻土を塗る予定です。

土間の上に被さっていた廊下
廊下・押し入れ・クローゼットを取り除いて現れた土間

また、エクセルギーハウスにするために、床下に井戸水を使った装置を、屋根裏と床下に断熱材を入れました。外壁を張るタイミングで、壁にも断熱材を入れる予定です。

エクセルギー装置設置中

まだ未完なので、工事総額は出ませんが、現在までに約400万円かかっています。うち、約130万円は市の助成金を活用することができました。

今回、エクセルギーハウスにしようと決めたのは、家の改修の相談をした知り合いがその提唱者だったことがきっかけでした。古民家でエクセルギーを取り入れるのは初めての試みです。雨・風・光があればどこでもできるので、ご興味のある方はこちらをご覧ください。エクセルギーハウス詳細:http://exergyhouse.life.coocan.jp/

家にあった残置物は?

元家主さんが処分してくれたので助かりました。その際、「こちらが必要なものは取ったから、もし今残っているもので気に入ったものがあれば取っていいよ」と言っていただき、長持(昔衣類を入れるに使った箱)と食器棚と靴箱を残してもらいました。

玄関のアクセントとなった長持

お気に入りポイントは?

土間のスペースが気に入ってます。玄関~勝手口が土間でつながっていて、訪問客も靴のまま気軽に家の奥まで入れるので、家の外と中の交流の場となっています。また、土間は引っ越してから飼い始めた愛犬「アフロ」(通称アフちゃん)の居場所なので、人懐っこい彼に会いに来てくれる人も増えました。

昔あった囲炉裏が、柱や梁を燻して黒くなっているところにも愛着を感じています。この部分はあえて残し、家のベースカラーとして扱っています。

土間はアフちゃんの居場所に

元家主さんからのコメント

生まれ育った家なので愛着はありましたが、最後に住んでいた母が亡くなってから、この家をどうするか兄妹で話し合いました。親族の誰も使う予定がなかったのと、放っておいて周りの家へ迷惑をかけるのは避けたかったので、使い手がいるのなら手放したいと考えるようになりました。今は肩の荷が下りてホッとしています。

森家から現在空き家を所有している人へ

もし、使っていない空き家を持っているのであれば、売ったり貸したりすればいいと思います。竹野に来てから、古くていい家が撤去されるのを目撃し、勿体ないなぁと感じました。私たちが住んでいる今の家も、古い良さは残し、「継承していく」という意識で住まわせてもらってます。また、ご近所から継承した建具も活用しています。他の空き家も、その良さのわかる人が住んだら家も喜ぶと思います。

編集後記

竹野で始まった新しい暮らしを謳歌しているお二人(と一匹)でした。今後、壁にも断熱材が入り、エクセルギー効果がフルに発揮されるのが楽しみです。古い家の良さが活かされているいい事例なので、今空き家を持っている方は、「こんなボロ家、ほしい人がいる訳がない」などと言わず、次の使い手の可能性についても考えてみてください。次回は、現役地域おこし協力隊として活躍中の子育てファミリーが運営するお宿にお邪魔します。お楽しみに!

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