竹野で生まれ変わった元空き家たち 住まい編⑤

今回のお宅は…

今回お邪魔したお宅は、2019年にご夫婦で大阪から移住した前田家。特に旦那様は10代の頃から竹野が好きで釣りをしに通っていたそうで、生粋の竹野ファンです。「60になったら竹野に移住する」ということをずっと前から言い続け、有言実行する形で奥様と一緒に移住されました。

移住してからは地元漁協の組合員になり、春~秋は主にアコウ釣り専門の釣り船「いさき丸」の船長としてお客さんを連れて海へ出ています。大阪にいた頃に渡船業を営んでいたので、その時からのお知り合いが竹野を訪れてくれるようです。仕事ではないときに、ご夫婦で海上へお出かけすることも。そんな前田家にお話を聞いていきます。

外観(対岸にも同じように船を係留している様子がわかる)
前田夫妻

どんな場所を探していましたか?

私の場合、船を持つということを最初から決めていたので、自分の船を家のすぐそばに係留できる家を探していました。具体的に言うと、竹野川の河口部の川に面した物件です。昔から通っていた民宿も、この竹野川沿いにあったので、川を見下ろす風景はとても好きでした。

空き家を探す際、苦労した点は?

昔から竹野へ通っていたので、顔見知りになった地元の人が「あそこ空いてるでー」と教えてくれることはありました。ただ、「空いている=売りに出されている」という訳ではないのと、「よそ者には売れない」という考えの人も中にはいるので、自分の条件に合った物件が見つかるまでには少し時間がかかりました。

結局、前から気になっていた元洋装店が売りに出ているのを見つけ、すぐに物件を掲載していた不動産業者に連絡しました。こうしてなんとか目標どおり、「60になるタイミング」で移住することができました。

修繕内容は?

1階は、リビング・寝室・小部屋の壁や天井を張り替え、畳は新しいものにしました。

2階は、釣りに来た友人に寝床として提供するため、畳の他に障子・襖などの建具も新調しました。また、2階縁側が傾いていたので、水平に直してもらいました。

これらはすべて業者発注で、工事総額は約300万円、修繕期間は約3か月でした。その他、移住してから自分で床張りした箇所もあります。

2階は2つの部屋の仕切りを取って1つの部屋に(畳・建具を新調)
2階縁側

お気に入りポイントは?

もともと竹野川沿いを希望していたので、やはり景色は最高だと思います。竹野港に一番近い橋がすぐそばにあり、橋の川上には山の風景、川下には港の風景が見られます。希望どおり、船は目の前の川に係留しているので、思い立ったらいつでも海へ出かけることができます。

こだわりポイントとしては、工事に関する作業をなるべく竹野の地元の業者にしてもらったことです。大工さん、左官屋さん、水道屋さん、ガス屋さん…すべて竹野で揃うので助かりました。実は川の対岸に船小屋も買って修繕したのですが、その工事も地元の方にしてもらいました。

橋のたもとにある家の前からの景色

家にあった残置物は?

家財道具は元家主さんが処分してくれました。こちらとしては、まだ使えるものは使いたかったので、洋装店時代に使われていた洋裁机やショーケースなども残してもらいました。

洋裁机は細かい釣り道具などの整理机として使っています。ショーケースにはプラモデル好きの妻の戦艦ヤマト(妻作)が納まっています。

洋装店の展示スペースだった場所には私たちの趣味の物を置いているので、通りすがりに珍しそうに覗いていく人もいます。

リビングの入口付近では元洋裁机が釣り具置き場として活躍
元展示スペースに並ぶ旦那様のバイクや奥様の戦艦大和

前田家から現在空き家を所有している人へ

放っておいて最後に崩れてしまうよりは、需要があるうちに売るなり貸すなり手放すことを考えたらいいと思います。

編集後記

長らく空き家だった洋装店は、前田家が移住される以前によく前を通っていました。洋服の展示スペースだった場所のカーテン越しに、マネキンの足だけがチラリと覗いていたのを覚えています。その場所がある意味別の展示スペースになっていることも感慨深いです。海沿いも素敵ですが、川沿いもなかなか捨てきれない…と感じた取材でした。どちらも真冬の強風は厳しいですが、最高の景色と引き換えだと思うとこの立地を選ぶ人の気持ちは十分理解できます。

次回は家業を継ぎに竹野へリターンしたご家族のお宅へお邪魔します。お楽しみに!

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