竹野で生まれ変わった元空き家たち 事業所編①

今回から、ここ数年で「事業所」として生まれ変わった空き家についても取り上げてみようと思います。空き家が事業所として生まれ変わることで、地域には新たなビジネスが生まれ、雇用が生まれ、そして、交流が生まれたりもします。地元のおじいさんから「竹野には昔、映画館もダンスホールもあったんだ」なんて話を聞くと今では全く信じられませんが、いつの時代も人が寄ってきて楽しめる場が新たにできるのはワクワクする話です。今後も事業所が減るだけでなく、新たな場ができ続けることを願って取材していきます!

今回のお店は…

竹野浜の1つ西側にある弁天浜にできたお食事処「うちげの料理 八塩」さんです。竹野産にこだわって仕入れた魚介類を使って、繊細な料理と美しい盛り付けで私たちの舌と目を同時に喜ばせてくれる、そんな素敵なお店です。

オーナーの塩見さんは豊岡市内の出身で、子どもの頃から竹野の海が大好きでよく訪れていて、結婚を機に同じく市内出身の奥さんと一緒に竹野で暮らし始めたという、いわゆる「市内移住」のご夫婦です。

「うちげの料理 八塩」外観
改修前の外観

どんな場所を探していましたか?

海の近くで飲食店のできる空き家を探していました。色々なお店で料理人としての修業を積んだので、立地によって料理内容を決めればいいと思っていました。

ここは弁天浜が近く、少し歩けば船着き場もあって、まさに「漁師町」という雰囲気なので、魚を出すお店にしようと思いました。

空き家を探す際、苦労した点は?

竹野で暮らし始めてから、しばらく店舗用の空き家を探していました。地元の人を通じて色々と情報をもらい、空き家の所有者に会って相談をした回数も数知れず。実は、使いたかった空き家が所有者によって撤去されてしまうという苦い経験が2度もあります。

「他人に譲るくらいならこの家は崩してしまおう」、「よそ者を地域に入れるな」といった声を耳にしたとき、残念な気持ちになったのは確かです。

今の場所に決まったとき、空き家を探し始めてから実に4年もの歳月が経っていました。結果的には、この場所ですごくよかったと思っています。

修繕内容は?

この建物は築約40年の鉄骨づくりで、骨組は傷んでいませんでした。骨組以外の解体作業は自分で行いました。

その後、壁の撤去や新設、風除室の新設、屋根の取り替え、厨房の修繕、トイレ周りの修繕、倉庫の新設…骨組以外はほとんど手を加えていますが、これは業者に発注しました。工事期間は約3か月でした。

厨房のビフォー(左)アフター(右)

お気に入りポイントは?

地域のまちなみに馴染む黒い焼板を外壁に使ったところです。そばには花壇も作って明るい雰囲気にしました。

焼板の外壁と花壇

また、内壁や天井には漆喰を使っています。漆喰は臭いを吸収してくれるので、個室で蟹を焼いても、少し時間が経てばすぐに臭いが消えるので助かります。

壁や天井は奥にある個室も含めてすべて漆喰

暖房は薪ストーブを導入しました。これ一つで店内全体が暖まり、冬は全くエアコンを付けなくて済みます。針葉樹も燃やせて、ススがつきにくいものを選んだので、掃除も楽です。

こだわりの薪ストーブ

家にあった残置物は?

軽トラを持っているので、不要なものは近隣のゴミ処理場へ自分で持ち込んで処分しました。元々お店だった場所なので、物はたくさんありましたが、自分で作業した分安くなりました。処分費は自己負担でしたが、全部で数万円だったと思います。業者さんにお願いしていたら、おそらく数十万円かかってました。

家主さんからのコメント

実は、もう取り壊す予定だったのですが、塩見さんから使いたいという相談を受けて、既に知っている人だったので、すぐにでも使ってくださいと言いました。歳をとると、空き家のもーり(但馬地方の方言で世話をすること)ができなくなります。他人に迷惑をかけたくないので、自分の元気なうちに整理しておきたいと思ってます。この町で若い人が活躍するのはとてもいいことです!

「うちげの料理 八塩」さんから現在空き家を所有している人へ

空き家は手入れをしないと朽ちていくばかりで、どんどんお金がかかる家へと化していきます。手放すなら今です。持っている空き家を欲しい人や使いたい人が現れたら、「ありがとうございます!」くらいの気持ちでいるのがいいのではないかと思います。

編集後記

オーナーの塩見さんのお話を聞いていると、店内の臭い対策や寒さ対策など、質的な面でお客さんへの気遣いが各所に見られる改修内容だと感じました。行ってみたいという方はお店のページから詳細情報をご覧ください。「うちげの料理 八塩」https://www.yashio.blue/
次回は、移住して漁師になった方のお宅へお邪魔します。お楽しみに!

by
関連記事