竹野で生まれ変わった元空き家たち 住まい編①

竹野には空き家がたくさんありますが、ここ数年で生まれ変わった元空き家たちの存在も忘れてはいけません。出会ったときの姿に「結構ボロボロ…使えるのかな…」と思っていた空き家でも、新しい利用者が現れ、その人たちの努力によって見違えるように変貌していく姿に何度も感動してきました。これから数回にわたり、生まれ変わった元空き家たちについて、取材していきます!

初回のお宅は…

竹野に初めてゲストハウス「ひととまる」をつくった石丸家。夫婦(当時はカップル)揃って移住したのは2015年。宿の開業は2017年。 宿の名前には「人・泊まる」、「人・留まる」、「人と丸(石丸)」などの意味が隠されていて、石丸家のネーミングセンスにまずはなんだかほっこりします。

さて、しばらくは宿の1室に夫婦で住んでいましたが、第1子を授かったタイミングで「そろそろ別で住まいがほしいな…」と考えていたところ、なんと宿の目の前の空き家(元海水用品店)の家主さんから声がかかり、物件を使えることに。この家は、石丸家とも親交の深い元大工さんが、若き日に職人として一番最初に建てた思い出の家でもあります。(1964年竣工)

外観(窓の外側の板は季節風対策)
石丸家

それでは、石丸家に色々と聞いていきます。

家賃は?

賃貸物件によっては家主さんが修繕NGの条件を出している物件もありますが、この物件は自分たちで好きに直していいよということだったので、直したい箇所を自費で修繕する代わりに、家賃については格安にしてもらうことができました。

修繕内容は?

汲み取り式トイレ(和式2つ+小便器)を水洗式トイレ(洋式2つ)に替え、周辺の廊下も修繕しました。部屋は畳の表替え(畳床はそのままに、畳表と畳縁を新しいものに替えること。下図参照)のみ。お風呂はガス給湯器を新調し、配管をつなぎました。また、1階リビングと2階にエアコンを取付け、1階に洗面台を新設。すべて業者に発注し、総額約250万円、修繕期間は約2か月でした。

畳の表替えイメージ図
引用元 https://kijima-tatami.com/2015/11/18/%e7%95%b3%e3%81%ae%e8%a1%a8%e6%9b%bf%e3%81%88%e3%81%a8%e3%81%af/
修繕前の廊下(右手が和式トイレ)
修繕後の廊下(右手は洋式トイレに変身)

お気に入りポイントは?

修繕したトイレ周りにはすべて無垢材を使い、あたたかな雰囲気にしました。また、もともとあった五右衛門風呂は丸い湯舟にレトロでカラフルなタイルが貼ってあり、気に入ったので外観はそのまま残しました。土間もお気に入りで、うちの子どもたちが近所の子どもたちと一緒に遊ぶ、ちょっとした集いの場になっているのが嬉しいです。

外観はそのまま残した五右衛門風呂(ガス給湯器を新調)
子どもたちの集いの場となっている土間スペース

家にあった残置物は?

家主さんが処分してくれていたので、もうほとんど残っていませんでしたが、土間にあった薪は近所の塩工房に燃料として使ってもらいました。置いてあったイスやサイドテーブルは使わせてもらってます。古い家ですが、その分所々に生活の名残があって落ち着いた雰囲気が好きです。

石丸家入居前の土間スペース(元家主さんは昔ここで海水浴用品を販売)

元家主さんからのコメント

生まれ故郷の竹野のために働きたかったのですが、就職先が地理的に離れていて、それが難しい状況でした。長男なので、竹野に帰ってきてほしいと願う両親とも色々ありました。昔は竹野駅~竹野浜に途絶えることなく歩いていた夏の海水浴客も少なくなり、ときどき帰る故郷が衰退していくのが目に見えました。自分の代わりに竹野の観光のために頑張ってくれている若者に、「ぜひ成功してもらいたい!」と思い、全面的に応援することにしました。

石丸家から現在空き家を所有している人へ

最近は竹野に住みたいという人が増えてきているので、持っている空き家を「貸してもいい」「売ってもいい」という人が少しでも増えることを願っています。

編集後記

土間の写真2枚を見比べて思うのは、何も手を加えなかった空間でも、今住んでいる人たちの生活の気配が加わるだけで、空き家が空き家でなくなったことを実感でき、命が吹き込まれたように活き活きするのが面白いなぁと思いました。次回は海に沈む夕日の見えるお宅にお邪魔します。お楽しみに!

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